丹波 高坂から鋸山(鋸岳)へ
作成 2003.9.15 やまぼうし
■山名:鋸山605.9m
■場所:篠山 2.5万宮田
■日時:2003.9.14
■同行:ハナミズキ
■コース
 篠山市西紀町 高坂(10:40)→林道堰堤(10:55)→鋸山東鞍部(12:45)→鋸山(13:1540)563P休憩(14:30)→東鏡峠(15:20)→高坂(16:20)
 Route Mapはここ
山渓の記事に惹かれて、西紀の高坂(たかさか)から鋸山(鋸岳ともいう)、東鏡峠の周回を試みる。雑誌にはいとも簡単に書かれていたが、上りも下りも踏跡すらないヤブ漕ぎとなった。しっかりとしたルートファインディングが必要な上級者向けとは本当である。稜線をわたる涼風と、もう稲刈りが始まり、コスモスの咲く高坂集落に秋を感じた一日であった。

鋸山(右)と背景の夏栗山(左)、黒頭峰(右)
「高坂集落」
 篠山から三和町方面への県道途中から高坂(たかさか)の集落に入る。集落は道が狭いので、入口の「トトロの家」のそばに駐車する。もう刈り取られた稲穂が積まれている。トラクターが行きかい、民家のコスモスが風に揺れる。その向こうに鋸山連邦が屏風のようにそそり立つ。ここから見ると、鋸歯状の鋭さはない。村人と挨拶を交わす。まむしに気をつけやとおばちゃん。この様子だと周回できる山道も残っていそうな雰囲気に気を良くする。

トトロの家

高坂の集落へ入る

高坂から鋸山連邦
「堰堤」
 軽がやっと入れそうな、轍のえぐれた林道が続く。民家のはずれに火事にあったような黒焦げの山荘風の建物がある。オニヤンマが前後してついてくる。やがて林道は堰堤で終点になる。保安林の看板があり、これから行く山道表示は途中でなくなっている。不安がよぎる。ここで思案。少し戻って右への踏跡をのぼる。

林道を歩く
「ヤブ漕ぎ」
 ジュクジュクの湿地帯である。左に瀬音を聞きながら苔むした小岩と羊歯のかすかな踏跡を辿る。荒れた植林地帯は多数の倒木で遮られ、踏跡も無くなった。何度か沢を右、左とまたぐ。大木に黄色テープを見つけるが作業用の物か、もはや何も頼れるものは無い。ルートファインディングに気をとられ、足を踏み外し、泥にまみれる。
稜線を目指してヤブ漕ぎの覚悟を決める。まだ標高は330mである。杉の植林帯から雑木に変わり、瀬音もなくなる。390mで大岩を巻く。右に谷を見ながら北を目指す。GPSの受信できそうな明るいところで現在地点をチェックする。標高480mの鋸山の東南ポイントである。ここで山頂への直登をやめて、東の鞍部を目指す。現在地点から最も稜線に近く、早くヤブを脱出したかった。510m付近で東西に走るトラバース道に出会うが、岩のゴロゴロした広場ですぐ消えてしまった。上が明るくなってきた。急斜面を直登して稜線の鞍部550mに到着、ほっと胸をなでおろす。

藪漕ぎの末、鋸山東鞍部へ飛びだす
「鋸山」
 息を整えて、稜線を西へ行く。いくつかの岩峰を乗り越え、鋸山山頂(三等三角点奥谷605.7m)mに着く。GPSも603mを指しているからほとんど誤差は無い。途中今回の山行きで唯一の単身中年登山者に会う。黒井から三尾山、鏡峠、鋸山、栗柄まで縦走すると言う。

鋸山から東稜線を望む(遠方は西ヶ岳と三嶽)


山頂は、南は立ち木に遮られているがほぼ270度の展望である。西には夏栗山、黒頭峰、三尾山、北に春日、氷上の盆地の彼方に妙高山、五台山、北播州の山々、鹿倉山、西には稜線の彼方に西岳、三嶽の多紀アルプスが覗く。握り飯をほおばり、至福のひと時をすごす。涼風が吹きぬける。

鋸山から北の展望(妙高山、春日平野)
「東鏡峠へ」
 東へ稜線を戻る。分水界の道は雑木と岩稜のアップダウンを繰り返す。石楠花やヒカゲツツジが叢生している。道をはずすことは無いが、結構横枝がうるさく、しばしば顔面を打つ。岩稜も急峻で乗越すのも一苦労だ。これらの岩が地上から鋸の歯のように見えるのだろう。

岩稜の尾根道を行く
取り付いた元の鞍部を過ぎて、東鏡峠へ進む。563mポイントは雑木の中であった。東鏡峠の西のピークは立ち木が切り払われ、ほぼ360度の展望で、南側に北摂の山々を望むことが出来た。盃ヶ岳、岩谷山、篠山三田境界の三国岳、愛宕山、その向うは大船山、白髪岳、松尾山、高山、西光寺山等等が新たに視野に入る。

東鏡峠西ピークから鋸歯状の稜線を振り返る
急降下して東鏡峠の広場にでる。標高520m、大きな馬の鞍のようだ。しっかりした表示と十字路を期待したが、そこは何も無かった。次のピークへ登るテープがあるだけだ。地形図の破線は微塵も存在しない。

*東鏡峠には道標が設置され、高坂越という表示になったようである(2010年現在)

「廃道のヤブ漕ぎ」
 今日何回目かのルートファインディングで、高坂へ下りる方向を見定める。林の疎らなところを狙いながら南方向に下る。ともすると東に向かいがちの雑木林を、斜めに下りる。標高400m付近で再びルートチェック。GPSは破線の少し東を示す。少し外れているが方向は間違いない。360m付近で杉の植林帯に入る。里が近いはずだが、まだ踏跡は無い。ケルンを発見する。もう間違いない。瀬音が聞こえ出し、やがて踏跡が現れた。ほっと胸をなでおろす。苔むした小岩と羊歯の林を下る。前方が明るくなり、民家の屋根が見えてきた。マムシが横切る。油断大敵だ。

東鏡峠

植林帯

東鏡峠への地図
里への出口に保安林の看板があり、東鏡峠への道がしっかりと記されているが、もう廃道だ。体は汗と泥にまみれ、半そでの腕は引っかき傷だらけ、帽子は蜘蛛の糸でねばねばである。暑くとも長袖は必要だ。

高坂と鋸山
再びコスモスと稲穂の村に戻ってきた。栗がたわわに実る。イチジクが手の届くところに熟している。農家の人たちからお帰りなさいの挨拶をうける。村人達は、今も峠道があると信じているようである。

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