京都 芦生の森自然観察ツアー

(上谷〜杉尾峠)
作成 2005.6.15やまぼうし
■行先:芦生の森
■場所:京都府美山町 地形図2.5万 中、古屋、久坂、山と高原地図 京都北山
■日時:2005.5.26()27() 晴れ
■同行:シニア自然大学同窓生15名+ガイド
■コース
1日目:千里中央→美山かやぶきの里→芦生山の家()
2日目:芦生山の家(0830)→(マイクロバス)→京大演習林入口→林道→けやき峠→下谷→長治谷作業場(0945)…(歩行)…上谷…杉尾峠(1310)…(マイクロバス)→林道→けやき峠→京大演習林入口→芦生山の家(1430)
Route Mapはこちら

下谷のカツラ保存木
「はじめに」
芦生の森を知らずしては森を語る資格はない。シニア自然大学必須アイテムでもある。在学中に訪れるチャンスを失い、同窓会として1泊旅行をすることになった。芦生は日本海に注ぐ由良川源流域の京都府美山町にあり、滋賀、福井の県境に位置している。日本海側気候と太平洋型気候の接点にあり、冷温帯と暖温帯の移行帯にあるため、植物の種類が多く、京都大学の研究林がある。関西では大峰山系に次ぎ原生的植生を残しているところである。
「かやぶきの里」
 千里中央から4台の車に分乗、池田→亀岡IC→丹波IC→美山町まで約2.5H。京都組1台と15:30にかやぶきの里駐車場で落ち合う。10年ぶりの美山は道路も整備され、沿道に土産物やレストランが出来て様変わりだ。かやぶきの家も手入れが進み、佇まいもずいぶん整った感じがする。

美山かや

ぶきの里

葺き替え
「芦生山の家」
 宿泊は芦生山の家、夕食の地鶏のすき焼きと2次会で盛り上がった翌朝、宿の弁当を持ってマイクロバスに乗り込む。ガイド氏は芦生演習林に18年間勤務し、植生調査をやってきたベテランで、本日は休暇をとって京都からやってきたという。ガイドブックに書いてあるようなお話はしませんと前置きし、ご自身の研究レポートの要約版を配布する。野草料理の著作もあるユニークな方で、長靴にこうもりがさ持参である。

芦生山の家

中根ガイド
ドライバーは芦生の森の地権者で、林道工事に携わった年配の方。山の家から長治谷作業場までと、杉生峠下から山の家までの林道をマイクロバスのお世話になる。

京大演習林事務所

官舎とトロッコ道
「京大演習林」
 山の家からすぐの京大演習林入口(標高360m)の車止めチェーンの鍵を開けて林道に入り、由良川の支流、内杉谷を遡る。しばらくは杉林がつづく。えー、こんなところにメタセコイアの並木がある。ここらは人工林のようだ。

ブナの林

下谷のトチノキ
「下谷」
 谷筋から離れ、山腹を巻きだすと展望が開けてくる。林道脇にはピンクのタニウツギが満開だ。緑の山腹を白く染めるのは熊の好物ミズキの花だ。けやき峠760mを越え、下谷(しもたに)を中山に向けて下る。車窓にトチノキ、カツラなどの原生林が現れ始める。

下谷の大カツラ
途中下車して沢に下りる。ブナやトチノキの巨木が迎えてくれる。苔むしたトチノキの古木に巻きついたツタ、根元や裂け目から生えるジュウモンジシダなどの共生が芦生の森を作り上げているといっていい。沢を歩き、保存木で芦生最大のカツラの巨木を観察する。樹高38m、幹周り9.95m、樹齢は300-400年とされる。
「長治谷作業小屋」
 再びバスに乗り、谷を下ると明るい広場に出てきた。ピンクの屋根は長治谷作業小屋である。ここは芦生の森の中心に位置する。ここでバスを降りる(標高640m)。山の家から途中下谷での散策を含めて約1時間少々である。

長治谷作業場
身支度を整えて、上谷(かみたに)を杉尾峠に向けていざハイキングへ。三国峠への分岐を見送り、杉の人工林に入る。この辺一帯の傾斜地のスギはほとんど腰が曲がっている。2〜3mの積雪の重みのためという。また根元が割れた木が多い。中には穴があいたものまであるは、熊の仕業だそうだ。もう商品価値はない。植林の管理も大変のようだ。

積雪で腰が曲がった杉

熊の被害
「野田畑湿原」
 杉林を抜けると野田畑湿原に出る。ここはかつて木地師(椀や盆など、木地のままの器物を作る職人)が木を植え、生活していたところで、芦生の森が長い間人の生活を支えてきたことを物語っている。
沢筋にブナ、ミズナラ、シナノキ、ミズメ、エゴノキ、クロモジ・・・等、直立している高木はサワグルミだ。一本のサワグルミから下駄300足が作れるそうです。山肌にニリンソウ、イワカガミが花をつけている。ほとんど平坦な道で、丸木橋をいくつか渡り、浅瀬を渡渉していく。ゴム長靴が有効だが、水量が少ないので飛び石伝いに軽登山靴でも大丈夫です。

渡渉を繰り返す
[原生の上谷]
 上谷の中流域は沢も広く、湿原にトチノキやブナ、ミズナラの巨木が群生し、ツルアジサイ、ヤブデマリも見える。いかにも原生林らしい森である。トチノキと良く似たホウノキもある。トチノキノの葉は葉柄が長く掌状複葉であることで区別できる。

上谷のトチノキ
他の団体2組に先を譲る。いずれもガイド付きで河鹿荘宿泊組みのようだ。途中カメラマンと中年の夫婦のハイカーに出会ったが、長蛇の団体はいい迷惑だろう。山道は団体に踏み荒らされ広がってしまい、残念ながら秘境のイメージはない。決められた道以外は歩かない、ぬかるみや流れがあっても避けて通ってはいけない、木の根は踏まない。これらは山歩きの鉄則だ。少し早いが、河原で昼飯とする。
モリアオガエル
 池の縁にでる。ここはモリアオガエルの産卵池で、樹の上を見ると直径20cmほどの白い泡状の卵塊が2つ、3つぶら下がっている。下の池ではイモリが待ち構えている。カエルの運命や如何に。自然は過酷だ。

モリアオガエルの卵塊

イモリの待ち構える池
「熊の冬眠跡
 根元にぽっかりとウロのあるトチノキの巨木がある。人が入れるような大きさだ。ガイド氏によれば、ツキノワ熊の冬眠の跡だという。もう使われてはいないが、木の裏側とすこし上側にあいている穴は非常口だそうだ。ほんまかいな。にわかには信じがたい。

熊の冬眠跡?
「由良川源頭
 杉尾峠に近づくにつれ、谷が深まり、傾斜がきつくなってきた。朽ちかけた巨大なミズナラの倒木が道をふさぐ。長い時間をかけて土に還り、再び新しい命を支えることだろう。流れがなくなり、ついに由良川源頭に達する。僅かに水が染み出ている。あたりはブナとスギの林が広がり、もうせみの鳴く声が響く。

由良川源頭
「杉尾峠」
 ジグザグに急登すると前方が開け標高760mの杉尾峠にでる。空気が澄んだ日は、ここから若狭の日本海が望めるとのことだが、本日は霞んでしまっている。長治谷小屋から約3時間余り、ガイド氏の説明にじっくり耳を傾けながらの自然観察ハイクだった。

杉尾峠から日本海方面

杉尾峠に憩う
「アシウテンナンショウ
 大休止の後、峠下まで伸びている林道に下り、迎えのマイクロバスに乗る。この林道は地形図にない。再びケヤキ峠を越えて往路に合流し、山の家に戻ってきた。まだ花をつけてはいないが、庭先のアシウテンナンショウが出迎えてくれる。初めての芦生の森であったが、季節を変え、あるいはコースを変えて何度も訪れたいところだ。

アシウテンナンショウ
人間と共生しつづけているこの豊かな森を、どうようにして守り生かし、次世代の人々に継承するのかまだ課題が多い。発表後久しい関西電力のダム建設計画は、まだ中止と決まったわけではないと地元紙は伝えている。

関連ページ:芦生トロッコ道を歩く(2013.6.3)


トップへ戻る     
inserted by FC2 system