2019.7.1
やまぼうし 更新2018.8.20/作成2006.8.1
荒天の立山連峰縦走(一の越山荘起点)
■日時:2006.7.28〜29、風雨のち曇 気温8〜10
場所:立山連峰 (雄山3003m、大汝山3015m、富士ノ折立2999m、真砂岳2861m、別山2874m)
■同行:シニア自然大学生3名、ハナミズキ
■ルート
  室堂ターミナル1510→一の越山荘1615() 0650→雄山(07450810)→大汝山(08400850)→富士ノ折立0900→真砂岳0930→別山1025→剣御前小屋(11151150)→雷鳥平1315→室堂ターミナル1400
Route Mapはここ

別山小ピークから室堂、天狗平を展望
 室堂から雄山〜大汝山〜富士ノ折立か〜真砂岳〜別山〜雷鳥平と、立山連峰を縦走する。梅雨明け直前の縦走路は視界ゼロ。ガスと横殴りの風雨に晒され、気温8度に体が凍える。夏山ガイドブックとは別世界の3000mを体験する。途中雷鳥に出会える幸運に恵まれたことで良しとしよう。

「一の越山荘」

 シニア仲間の立山観察会終了後、弥陀ヶ原から室堂ターミナルまで、前泊した天狗平山荘の車で送って戴く。ありがたい。装備を整えてターミナル3F(標高2430m)から外へ出る。

室堂ターミナルを出る

石畳の登山道が一の越山荘まで続く
相変わらずガスで視界はきかないが、雨は小ぶりだ。縦横に走る石畳の遊歩道は案内標識が頼りである。道を尋ねたりしながらようやく一の越山荘への登山道に乗る。GPSはあと1.5Kmを指す。これが登山道かと思えるような石畳の道が緩やかに登り続ける。残雪が多く、大小7つの雪渓を越える。軽アイゼンはザックに入れたまま、ストックでバランスをとりながら慎重に足を運ぶ。

一の越山荘まで大小7つの雪渓を渡る

祓堂

祓堂の先で雷鳥にめぐり合う
祓堂を過ぎる頃からジグザグの階段を登るようになる。登山道脇5mほどのところに3羽の雷鳥を発見、我々が近づいても慌てて逃げる様子もない。僅かの急登で一の越山荘ある鞍部(2700m)にたどり着く。いきなりの強風に体が飛ばされる。ここは風の通り道のようだ。山荘は荒天のためキャンセルが多く、5人で向かい合わせに2室をとる。

一の越山荘到着

一の越山荘夕食

立山の天気予報は雨のち曇、降水確率80%
食堂のテレビ前には明日の天気を心配して大勢のハイカーが集まるが、風雨の予報にため息をつく。部屋に戻り明日の行動の打ち合わせをする。エスケープの大走りコースを考えたが、山荘の主によれば、このコースは4、5年手が入れられておらず荒れており、また今年は残雪が多く急傾斜の雪渓歩行は危険という。体力を必要とするが、当初の縦走ルートを行くことに決める。叩きつける雨音と風の唸りで一晩中寝付かれず、不安な朝を迎える。
「雄山」
 朝の天気予報は昨晩と変わらず、多くのハイカーが登山を断念する。6:50、一の越山荘(2700m)を出発し、雄山を目指す。トップを行くリーダーは学生時代からの登山経験の深いYさん、私は一番安全な2番、ハナミズキが3番、4番はコース経験者のベテランHさん、しんがりは北摂山の会代表のSさんがつとめる。ガスと強風、時々雨が吹き付ける天候である。

一の越山荘の出発

目の前に立ちはだかる岩ゴロの急登から始まる。黄色のペンキが目印だが、視界10mほどのなかでは見失いがちだ。とにかく上に上に登れば頂上に達する筈だが、ペンキ以外の道は浮石が多く、落石の危険がある。リーダーは西の強風を避けるよう風下を選びつつ一歩一歩ゆっくり登る。途中で三の越の道標が目に入るが、ほとんど休憩なしに約1時間、雄山頂部の一等三角点(2991.6m)に達する。

雄山直下で

一等三角点2991.6m
ガスの中に雄山神社の巨大な姿が浮かぶ。外気温は8℃を示すが、さして寒さは感じない。祈祷料500円を払ってストーブの燃える神社内に入る。神主さんと、二人の巫女さんがお土産を売っている。雄山山頂(3003m)登拝は断念して入口で記念写真を撮る。若夫婦と中年夫婦、登山を断念して我々を見送ってくれた筈のシニア単独者と二人連れの若い女性が後を追ってきた。中年夫婦は祈祷を受けてここで下山していった。

雄山神社

拝殿

雄山頂上(3003m)を仰ぐ

雄山登拝口で
「風雨の縦走路」
 30分ほど休憩して大汝山へ向かう。稜線の西側(室堂寄り)に縦走路が続く。ガスの切れ目から一瞬室堂側の雪渓が覗く。縦走路から外れた巨岩が、立山連峰の最高峰、大汝山(3015m)であった。GPSもドンぴしゃり3015mを示す。天気なら、ここは眼下に黒部ダムを望む絶景のポイントのはずだが、本日は視界ゼロ。すぐ先の大汝休憩小屋に入り込む。あるじが奥から出てきて、今日初めてのお客さんだと告げられる。エスケープの大走りコースは危険と、ここでも忠告を受ける。

ガスの切れ目から縦走路が覗く

立山連峰最高峰の大汝山3015m

大汝休憩小屋

右手に、霞む奇岩を見ながら3000m前後の縦走路を行く。富士ノ折立(2999m)をパスして真砂岳に向かう。真砂というだけあって、岩場から砂礫の道に変わる。遮るものもない稜線に風雨が叩きつけ、地図やメモ帳も広げられない。デジカメも撮影できない。真砂岳手前の手製の標識で現在位置を確認する。まもなく大走りコース分岐で、真砂岳、内蔵助小屋方面への案内がある。

富士ノ折立2999m

真砂岳近くで

別山への登りが始まる
真砂岳(2861m)をかすめて別山へ向かう。緩やかに下り、小走りコースの分岐を過ぎると、砂礫の道から再び岩場の登りとなる。反対の剣御前小屋から登ってきた団体とすれ違う。別山バイパス分岐に到達。案内標識によれば積雪期はバイパスは危険とある。遠回りになるが別山頂上を経由することにする。

別山の祠で
僅か100m足らずの別山への登りだが、急傾斜の上、一段と風雨が強まり、霙かと思うほどレインウエアがバチバチと音を立てる。風雨を受ける左半身は凍え、手袋を握れば水が滴り落ちる。体力消耗で、一歩を踏み出すのがやっと。ここが本日の最難関であった。別山頂上(2874m)の祠に到達、休憩。かじかんだ手でつまむチョコレートに息を吹き返す。ペースメーカーのリーダーに感謝する。
「剣御前小屋」
 右手に剣沢の雪渓を見て、緩やかに下り、別山バイパス道と合流する。ここから剣沢への分岐もある。風は強いものの、雨の上がった砂礫の道を、剣御前小屋方向に向かう。

剣沢の雪渓を間近に、別山を下る

別山バイパス、剣沢分岐点で

剣岳を背景に
小ピークに達した時、突然霧が晴れる。眼下に剣御前小屋が、右手に中腹以上を雲に覆われてはいるが剣岳が、左手に雷鳥平から天狗平、室堂方面が覗く。めまぐるしく変わる風景に見とれる。今までの労苦が一気に報われる。ただ、辿ってきた雄山からの稜線は依然としてガスに包まれたままである。

剣岳はガスの中

眼下に剣御前小屋が

剣御前小屋で
ルンルン気分で別山乗越しの剣御前小屋(2750m)に下りる。ここは剣岳への前線基地で、ハイカーや山岳カメラマンでごった返している。暖かい小屋で冷たい弁当をほおばる。身支度を整えていると、後発したシニア単独者と若い女性連れが下りて来た。我々に勇気をもらって、無事縦走できたと感激の様子。
「雷鳥平」
 雷鳥沢を下る。空は明るく、風も治まり、気温も12℃まで上がってきた。歩きにくい岩ゴロのジグザグ道だが、コイワカガミやハクサンチゲなど高山植物を観察する余裕が出てきた。

雷鳥沢から雄山方面を展望。稜線は姿を見せない。

雪渓の縞模様を楽しみながら雷鳥沢を下る

雷鳥沢の大雪渓
山麓の大雪渓を渡り、称名川のほとりに降り立つ(標高2260m)。橋を渡り、キャンプ場から遊歩道に沿って室堂に向かう。最後の難関は標高差80mの地獄谷の石段道だった。

雷鳥沢雪渓で

称名川を渡り、キャンプ場へ向かう

地獄谷を上る

帰路 立山駅
14:00、週末の観光客でごった返す室堂ターミナルへ戻る。一の越山荘を出てから7時間余りの厳しいハイキングだった。短パン、Tシャツ姿で縦走する写真が載ったガイドブックとは別世界の体験だった。富山地方の梅雨明けは2日後である。

<雷鳥沢で出会ったお友達>


ツガザクラ

コイワカガミ

ハクサンイチゲ
斜交いに下り白山一花かな     ハナミズキ

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