京都 片波川源流域・杉の巨樹群を訪れる
UP 2013.10.4改定/2007.10.15 HRY
■日時:2007.10.12(金) 曇のち晴
■場所:京都市右京区(元京北町) 片波川源流域
■参加:環境科28名+現地ガイド
■ルート
JR京都0835→ウッディ京北1000→林道駐車地1030→観察路入口(1155昼食1230)→観察路周回(1230〜1510)→林道駐車地1525→ウッディ京北1600→JR京都1730
Route map はこちら 観察路mapはこちら
京都市右京区(元京北町)の片波川源流域の巨大杉群落を訪ねる。ここには800年の時を越えた巨大な伏条台杉(ふくじょうだいすぎ)が今も自然のままに残っている。
平安杉 |
―伏条台杉―
片波川源流域一帯の森は、平安の時代から御杣御料(みそまごりょう)として守られてきた森で、御所や都造営のための建材を切り出していたところです。鎌倉・南北朝には林業技術が発達し、一本の木から多くの材が取れる台杉仕立てが盛んになりましたが、その後の品種改良で、挿し木による一本植に代わりました。そのため台杉仕立ては見捨てられ、巨樹となって今日まで残されたものと思われます。
伏条台杉は日本海側に分布するウラスギの一種の「アシウスギ」です。枝を長く伸ばしたものが毎年雪に押さえられてうちに、地面に着き、根を出して枝が幹となり新しい株に成長する伏条更新(ふくじょうこうしん)により繁殖していきます。ひょっとしたら森全体が根で繋がっているかも知れません。
「片波川林道」
京都市内から車で1時間あまり、北山杉の美しい周山街道を北上して旧京北町の中心ウッディ京北に着く。ここで自然観察インストラクターと落ち合い、先導を受けて、桂川に沿うR477を花背方面に向かう。約17km地点の片波口から林道に入り、支流の片波川を遡る。マイクロバス車幅ぎりぎりの急勾配の悪路を上り、展望がきくようになった標高600m付近の車止めの広場で下車する。
水澄むや磨き丸太の里抜けて 幸子
ここから林道を登る。ガイドI氏 |
林道にはミズナラ、イヌブナが多い |
観察路入口でアユ弁当 |
ここは京都府自然環境保全地域です。林道沿いの植生を観察しながら約2Km、観察路入口まで歩く。林道沿いには、ウリハダカエデが群生し、ミズナラ、イヌブナが目立ちます。日照りが続き森の恵みが少ない今年は、熊や鹿が里へ下りてきそうとガイド氏。標高670m付近の観察路入口に到着する。ひとまずここで昼食タイムとします。アユ弁当がおいしい。
「観察路」
踏跡のような観察路を入ると、まずは樹齢400年の「迎えの大栗」の歓迎です。続いて一の峰(678m)の小広場に園内の案内図があります。
迎えの大栗 |
6種の木が宿る宿杉 |
隣にあるのが「宿杉」で、枯れ死した台杉の上に6種の木(リョウブ、ソヨゴ、コシアブラ、ネジキ、ノリウツギ、スギ)が宿っています。
宿杉に宿る一樹の初紅葉 幸子
複数の枝が主幹にとって代わるように直立する立条更新 |
盤取杉 |
「窓杉」、「大櫓杉」、「舟形杉」を経て二の峰(685m)に至る手前に樹齢300年のアセビがあります。大きいわけではありませんがこれも巨樹です。曲がりくねった幹が妖怪のように覆いかぶさってきます。主幹を大きく削り取られた「盤取杉」は戦後のことのようです。近くには防虫のため、根本を包帯に巻かれたり、伐採され袋詰めとなったミズナラがころがり、痛々しい感じを受けます。
貫禄の大主杉 |
二の峰を下ると斜面に「大主杉」が鎮座しています。この辺りから、古株の根を踏まないように柵と木道が設けられています。伏条とわかる「三本杉」を眺めつつ箕毛谷を下ります。この谷は暗く、水分の多い土壌で、テツカエデが群生しています。マムシやヤマヒルの住処ですから夏は歩行注意です。ここから上を眺めると、個性的な巨樹が並んで見えます。まるで歌舞伎の顔見世のようです。
谷守の杉の巨木や天高し 二三弥
自然観察路と三本スギ |
ヤマヒルに注意ながら箕毛谷を下る |
枝が地面に触れ、新たに根が生える伏条更新 |
谷の下方にあるの最も背の高い「谷守杉」を観ながら東尾根に向かう。尾根別れから一の峰へ戻ることができますが、我々は急階段を下り東尾根に進みます。
樹齢800年以上、最大幹周りを誇る平安杉 |
100mほど下ったところが東尾根広場で、ここに片波源流域最大の「平安杉」があります。幹廻り15.2m、根本から幾つにも分かれた幹がアシウスギの特徴を表し、見るものを圧倒します。
悠久の平安杉や秋の声 幸子
二股杉 |
オランウータンのようなY字杉 |
熊の爪あと |
保全区内には幹廻り3mを越える杉が250本以上あります。さらに東尾根終点の「大留杉」まで往復し、全コースを周回したいところですが、4時間はかかるということで、御杣坂から元に戻ることにしました。本来、杉は真っ直ぐに成長していくものですが、このように怪奇な形となったのは人のなせる業であり、複雑な気持ちになります。
素晴らしいガイドに恵まれ(破格のガイド料金@3Kですが)、観察路を後にする。ガイド氏は植物学者の父親の影響を受けて、小さい頃から京北の山々を歩いていたそうです。西日に輝くススキの林道を下る。ウッデイ京北で、平安時代から続く京の納豆をお土産に帰途に着く。
花芒揺れて照り合ふ峡日和 |
平安杉で環境科一行(左端ガイドI氏) |
悠久の伏条台杉秋の山 二三弥
*本文は京北自然環境インストラクター連絡会発行「片波川源流域自然観察ガイドウォーク」を参照しました。句は秋山さん、鈴木さんに提供いただきました。
やまぼうし
関連ページ:片波川源流域・伏条台杉群生地の自然観察 2013.10.4
片波川源流 2006.11.8