武庫川渓谷と桜の園 |
■日時:2008.4.18(金) 天気 小雨のち曇 ■集合:JR西宮名塩 10:00 ■行先:JR西宮名塩〜くらがり街道〜福知山線廃線跡 〜桜の園〜JR武田尾 約9km ■同行:シニア自然大学 環境科 24名 |
阪神間の母なる川、武庫川。全長65Kmの上流は谷中分水界で加古川と繋がり、中流に渓谷がある全国でも珍しい河川です。トンネルと鉄橋の続く旧福知山線廃線跡を歩き、新緑の武庫川渓谷の自然を観察するとともに、ダム建設についても考えて見ました。また途中には桜博士「笹部新太郎氏」の愛したサクラの演習林「桜の園(亦楽山荘)」があり、櫻守の会事務局長I氏の案内で山荘を巡り、里山の整備のお話やヤマザクラなどを観賞しました。
武庫川渓谷を歩く(10:10〜11:55)
降水確率40%。決行とはなったものの、朝から小雨模様の天気で参加者は23名と少ない。JR西宮名塩から廃線跡の武庫川堤まで、丹波と摂津を結ぶ旧くらがり街道(丹波街道)をゆく。かつて丹波杜氏が通った道も、今は頭上を国道176号や中国高速道が走る。
くらがり街道 |
武庫川渓谷の始まり |
廃線跡に出る。足元に注意しながら、時々傘を広げての渓谷歩きとなる。旧福知山線は昭和61年(1986年)に名塩駅を含む新ルートが開通すると同時に廃線となる。武田尾駅までトンネル6つと鉄橋を含む7Kmがハイキングコースとなっているが、管理されたコースではなく、あくまでも自己責任でということでJRが黙認している。
武庫川が、渓谷から大きく屈曲して平地に入るこの辺は、2004年(平成16年)10月の台風23号で大水害に見舞われた。リバーサイド住宅は床上浸水し、全戸移転することとなった。
武庫川渓谷は、今から約100万年前に六甲山地が隆起した時に、これに対抗し穿刻を続け、流路がそのまま残る「先行河川」で、渓谷を挟む山々はほぼ標高350mの台地を形成している。清流岩を食む渓谷も、昨日来の大雨で増水して水音も高く、案内の声もかき消されてしまう。
高座岩とダム建設予定地 |
溝滝 |
最初の北山第1トンネル(318m)手前がダム建設予定地で、調査のための足場や岩盤調査の坑道が残る。一般ハイカーは気づかずに通り過ぎてしまうが、ここに天端標高120m、堰堤高73mの穴あきダムが計画されている。環境アセスメントの結果、計画は見直されることとなり、現在は凍結状態ではあるが、中止となったわけではない。足元の巨岩は、渓谷最大の高座岩といい、雨乞いのための岩といわれている。
北山第2トンネル入口で |
雨も上がったので、トンネルに入らずに渓谷脇の回り道を歩く。第2のトンネルは北山第2トンネル(413m)でコースで最も長い。S字にカーブしているため真っ暗闇で、懐中電灯がないと危険である。重次郎ヶ淵、溝滝(渓谷最大、雄滝、雌滝)を過ぎる。対岸の断崖上部に見えるのが天狗岩で、近くにあった仙人岩は川に崩落してしまっている。
武庫川第2橋梁を渡る |
正面に桜の園を望む |
第3番目の溝滝尾トンネル(149m)を出たところに武庫川第2橋梁(長さ70m)が掛かる。トンネルと赤さびたトラス構造の鉄橋は、廃線跡でも最も印象的な光景である。橋の側道を通り、左岸に渡る。すぐに4番目の長尾山第1トンネル(307m)に入るが、手前に積みあがっている枕木は、洪水でトンネルから流されたものだそうである。ここも懐中電灯必須の真っ暗闇で、出口付近は、道床がえぐれて水溜りとなっている。
親水広場で昼食 |
トンネルを抜けると、前方はるかにに桜の園(亦楽山荘)の森が見える。武庫川に落ち込む緑の稜線をバックにヤマザクラが白く輝く。その風景は桜の園の案内パンフレットの表紙を飾る。廃線跡に大きな石のころがる展望広場を通り、桜の園入口の親水広場に到着、小学生の一団とともに昼食タイムとする。広場には笹部新太郎博士ゆかりの荘川ザクラ、ササベザクラが植樹されているが、今年数輪の花をつけたそうである。
桜の園(亦楽山荘)13:00〜14:20
園内案内図はここ
桜の園(亦楽山荘)は面積40ヘクタール、笹部新太郎博士(1887〜1978)の桜の演習林で、最盛期にはヤマザクラ、サトザクラが30種5千本が植えられていたが、現在約1千本が残る。ソメイヨシノは一本もない。現在は宝塚市の里山公園となっており、ボランティア「櫻守の会」260名余が手入れを行っている。
桜の園入口で(前列左端、櫻守の会 I氏) |
「櫻守の会」事務局長I氏(シニア5期)の案内で、園内を巡る。常緑のアラカシ、ソヨゴ、ツバキ、ヒサカキ、アオキなどが森を覆い、暗く、がれ地が多い。櫻守の会では、明るく、豊かな森にするために、枯木の伐採、間伐、下草刈り、植樹などを行っている。また近隣の小学校の森林体験学習を受け入れ、自然の大切さを次世代に伝えていく活動も行っている。
エントランス広場 |
もみじの道を登る |
ロックガーデンの隔水亭(シャガ群生) |
親水広場→エントランス広場→もみじの道→ロックガーデン→育樹の丘→さくらの道→エントランス広場→親水広場と、標高差100mの約1時間の周回コースを歩く。エドヒガン、ヤマザクラ、サトザクラのほかに、モミジ、カツラ、イチョウ、キササゲなどが植えられている。
育樹の丘のエドヒガンザクラ(樹皮が縦縞模様) |
園内に数本のサトザクラ |
ヤマザクラの老木(さくらの道) |
見所は、さくらの道から俯瞰するヤマザクラであるが、3月になって暖かい日が続いたため、開花が平年より早く、すでに散りかけであった。しかしながら、花が散っても気品を保ち、観賞に値するのはヤマザクラならでしょう。
さくらの道のヤマザクラ群 |
親水広場に戻り、第5番目の長尾山第2トンネル(147m)、ついで第6番目の長尾山第3トンネル(91m)を抜けると武田尾の民家が近づく。
ヤマブキの廃線跡を武田尾へ |
武田尾「さくらや」の展望デッキで反省会 |
反省会は武田尾の「さくらや」さん。武庫川を望む展望デッキの席でいただいたカラスノエンドウとモミジのてんぷらが忘れられない。(了)
写真・編集 やまぼうし