丹波 迷走の海見山・柏野山

up 2019.2.15/2018.3.15/2009.3.5 やまぼうし
■日時:2009.2.28/3.1(土・日) 天気 晴
■山名:三田市・篠山市 海見山(519m)、柏野山(573m)、古森山(550m)
     地形図 2.5万 藍本・篠山
■同行:ハナミズキ、単独
   Route Map(GPS)はここ

油井付近から海見山を見る
 10年ぶりに海見山へ。海が見えるはずという女性歴史研究家の情報に接し、確かめて見たくなった。また柏野山登頂に失敗した思いがいまだにくすぶっていたからでもある。海見山頂からはやっぱり海は見えなかった。ひょっとして南稜線途上から見えるかもの期待が裏目に出て迷走する羽目に。その晩気になって眠れず、翌朝再度挑戦、周辺の枝道も探索してやっと気が休まった。2日間にわたる記録です。

第1日(2009.2.28)
ルートタイム
古森BS1040〜林道分岐1100〜地蔵峠1120〜第2水路道分岐1130〜古森山1155〜柏野山1210〜古森山(1230昼1250)〜ため池(うらやま池)1300〜第2水路道分岐〜地蔵峠1320〜海見山1335〜南尾根迷走(1410〜30)〜海見山1510〜地蔵峠1520〜古森BS1540
古森(こおもり)
 なかなか読めない地名。古森バス停からR176を渡って舞鶴自動車道を潜る途中、畑仕事のおばあさんに尋ねると「こおもり」という。海見山?は〜きいたことがねえ。うちの山はそこだと海見山の手前の小山を指さす。地元ではそんなものかも知れない。実は武庫川ハイキングでガイドをつとめてくれた油井出身の郷土史研究家酒井古老によれば、昔は「うみのつじ」と呼んでいたが、国土地理院が三角点を設置するときに勝手に「海見山」と読みにくい名前をつけてしまったと嘆いていた。

油井から古森山と海見山(右) 2003.10.19
地蔵峠の丸木橋
 舞鶴道の高架を潜ると山奥に広い林道が続いている。林道脇には地蔵さんが祀られ、シキミがたくさん植えられている。石橋を渡って曲折ししばらく進むと右手に海見山取り付きあり、木の枝に黄・青・黄のテープが巻かれ朽ちたプレートがぶら下がっている。なぜテープの色を書いたかというと、実は翌日に黄・青・赤に変わっていたからである。写真を見ていて発見した。ミステリー?一晩のうちに誰かが変えたのである。標高280m。
さて、倒木と苔むした岩ゴロ道を右手に流れを見ながらジグザグに登っていくわけだが、落葉に隠れた小岩が実に歩きにくく、下手すると捻挫しかねない。出てきた鞍部430mには見覚えのある3本の丸木橋がある。古地図によると「地蔵峠」と書かれている。ここは十字路で南は海見山、北は柏野山、東に伸びるU字溝の道(第1水路)はどこへ?2日目に確認することになる。

舞鶴若狭道ガードを潜る

林道を登る

地蔵さん

海見山への分岐(テープ)

地蔵峠・丸木橋(十字路)に到着430m

東に延びるU字溝(第1水路)
古森山(こおもりやま)
 北側へ取り付き、柏野山方面を目指す。しっかりした道がついている。左手にお地蔵さんをみて急登すると、右手に再びU字溝(第2水路)の道がついている。こちらは帰りに辿ることとなった。一つのピークを越えて、北上を続ける。適当に切り開かれた明るい尾根筋である。終点は小高い丘で境界石がポツンとある。プレートもない無名峰だが、どこかのWEBに「古森山」と書かれていたのでそのように呼ぼせていただく。コナラ、ソヨゴ、リョウブ、アセビ、ヒイラギに囲まれ展望なし。標高550m。(古市地区まちづくり協議会の地図によると寺跡と記されている)

お地蔵さん

古森山への明るい尾根道

こんな道もある

第2水路を右に見て直進(帰りはここを通る)

古森山550m(寺跡)
柏野山(かやのさん)
 東に伸びる広い稜線を歩く。右手の湿原は地形図破線のため池に注ぐ川の源頭だろう。すぐに大きなリョウブの木の下に柏野山の三角点石573mを見つける。地形図では三角点表示がなくなっている。頂上部分がフラットなのでどこがピークか良く分からない。南東方向に下りていけそうだが、マツ、スギなどの疎林帯でルートが良く分からない。日当たりもあまりよくないので、とりあえず古森山に引き返して昼飯とする。

古森山から柏野山への道

柏野山ピーク573m(三角点跡あり)
 元きた道を足早に峠の丸木橋をめざす。ところが、どこでどう間違ったのか、東側にため池が見える(うらやま池)。往路では全く気づかなかった。とにかく崖を下りて池の堤防にでる。満々と水を蓄えた綺麗な池で、堤防から谷あいはるかに六甲や三田の市街が覗く。さすがに海は見えない。今日一番の展望地であった。

ため池(うらやま池)

三田、六甲の展望
 ポンプで揚水した水が、標高490mレベルで山の斜面を巻くようにつけられた水路(第2水路)を流れているので、これに沿って歩く。流れは途中で谷に落ちこぼれていってしまい、水のない水路道を歩いていくと、予想通り往路のU字溝の道に合流した。

うらやま池堰堤

ポンプで導水

標高490mを取り巻く水路(第2水路)
海見山(うみみやま)
 再び地蔵峠の丸木橋に出てきた。海見山をめざして南の山肌に取り付く。明瞭な道が頂上に導く。僅か15分の登りで海見山三角点519.0mに到着する。さて海は見えるか。残念。南は背の高いアカマツ、リョウブ、ソヨゴなどの深い森で展望ゼロ。東に立ち木を通して白髪岳、松尾山が覗く。

海見山三角点519.0m

白髪岳と松尾山が覗く
南尾根迷走
 さてどうするか。予定では古森に戻るのだが、南尾根を下る道もありそうで、途中から海が見えるかも。小休止して、コンパスを頼りに南へ進む。GPSもあるが、ルート入力はしていないし、深い森や谷では受信できない。今までたくさんあったテープなど目印は全くない。立ち木のまばらなところを選びながら、比較的フラットな尾根を南へ下っていく。
 30分も下り、標高470m付近で虎模様のテープを発見した。安堵してそちらへ向かったのが迷走の始まりだった。少し南西に振っているのが気になったが、南へ修正しつつ急な下りが始まる。完全に踏跡もなくなった。尾根の下りは怖いことは知っていたが。辛うじて受信したGPSで現在地を確認すると、標高380mで西隣の小尾根にいることを発見。25000地形図を持ってはきたが、等高線の微妙な変化を読み取ることができなかった。

海見山から南尾根の踏跡道

迷走の始まり(とらテープへ)470m

迷走の谷には炭焼き窯跡が(戻る)
 戻るか、谷を横切って東の尾根に取り付くか。その尾根に道がある保障はない。戻るも下るもほぼ中間点。ハナミズキが岩にけつまずいて転倒し足に怪我。これが泣きの始まり、以降の決断を鈍らすことになる。谷を横切り、尾根に取り付いたものの道らしいものを発見できず、戻ることに決定。結果論だが、もう30mも東に行けば切り開き道があったのである。

古森に下る
もう一度上り返すのは、肉体的にも精神的にも疲れる。2人とも無口のまま、海見山を通過、地蔵峠から林道まで一気に下り、古森BSへ戻る。

第2日(2009.3.1)
ルートタイム
(第2日):細田橋(駐車地)1020〜大谷池1035〜鉄塔1045〜稜線〜迷走分岐点1145〜海見山(1205昼1215)〜地蔵峠1225〜第1水路道〜ため池(うらやま池)1225〜柏野山1313〜古森山1320〜第2水路分岐1340〜地蔵峠1350〜林道1405〜高速側道1410〜R176草野駅前1425〜細田橋(駐車地)1440
送電線鉄塔
 眠れぬ夜を過ごした翌日、リベンジを期して南尾根から単独で登ることにする。細田橋近くの道路脇の空き地に駐車して、武庫川沿いに摂丹国境を越えて南下する。目の前に見えている送電線鉄塔への取り付をさがすが例の火の用心看板がない。集落の分岐(古い道標あり)を北上する。山道なのに上から車がどんどん下りてくるのは別荘地があるからだろう。サンキュウ荘、サンキュウ牧場、サンキュウ窯の看板が立ち、サンキュウの園入口と「ぐちきき地蔵」の看板がある。その奥にため池(大谷池)があり、日曜日にも関わらず重機が入って堤防の工事中である。作業員が不審そうに私を眺めている。山を訪ねても分からない。ところが堤防の先に鉄の橋がかかっているのを発見、火の用心はないが巡視路だと分かる。やはり鉄塔に向かって道がつけられていた。

工事中の大谷池と目指す鉄塔

巡視路鉄橋

鉄塔から海見山(奥)を望む
南尾根
 鉄塔の真北に尾根が続き、これから登る海見山の山頂が見えている。ここから道らしいものはないが、ちょいとヤブを掻き分けると尾根筋に立派な切り開き道がついている。張り出した横枝がうるさいが、ルンルン気分の尾根歩き。コシダの群生地は踏跡か獣道があるから迷うことはない。深いところで胸の高さぐらいだ。ザレ場もあるが、振り返れば虚空蔵山が良く見える。

鉄塔裏から尾根に切り開きが

コシダの群落が続く

ザレ場から虚空蔵山
 標高350mぐらいからは岩場となる。二六と書かれた石柱がある。ここは摂丹国境で三田と篠山の境界でもある。標高370mぐらいからは深い林に入り込み、うっかりすると道をはずしかねない。右手に分岐していく道があったが、そのまま直進する。

二六石

シダを過ぎると岩稜地帯

森林帯を急登する(直進)
 傾斜が増し、立ち木を掴みあえぎながら登る。GPSで確認すると昨日迷走した地点の30mほど東を登っている。標高400mで巨岩に行き当たる。このあたりは道も定かでなく、上から下るときは尾根をはずしそうである。とにかく上へ上へ。テープなど目印は何もない。標高470mで見覚えのある虎テープのところに出てきた。また境界石もある。よく見るとここはY分岐となっておりテープの位置は今登ってきたところでなく、西側についている。どこへ導くのか良く分からないままテープに誘導されて迷走したことになる。一件落着。さて昨日の道を辿って3回目の海見山三角点で本日の昼食をとる。

巨岩を越えて

迷走ポイントに合流(とらテープ)

赤杭・境界石
水路跡
 足早に地蔵峠の丸木橋まで下り、昨日通らなかった東のU字溝道(第1水路)を行く。標高430mの水平道が山を巻く。ところどころで山から染み出した渓流を渡る。右下の谷から瀬音が響きだすと思うまもなく渓流にぶつかる。これから先は道はない。ため池から流れ出していることは分かっているが、沢歩きの準備はしていないので、沢をはずさないようにヤブをこぎつつ、ため池の堰堤の下に出た。昨日歩いた490mを取り巻く水路(第2水路)にあがり、堰堤上に立つ。

丸木橋から東へ続く水路跡をたどる

標高430mの水路(第1水路)

渓流で行き止まり

藪漕ぎの末うらやま池堰堤へ

うらやま池

三田、六甲の展望
 水路の謎が解けた。水路は2段となっており、上段の水路は490mラインを、下段の水路は430mラインを流れて、ため池の水を篠山側に導いていたのである。今はその必要はなく、古森のおばあちゃんの話ではポンプで汲み上げてるから、わざわざ山から引き込むことはないのだそうである。
*山越えの水路 古森川
 古森村は武庫川が流れるものの、田畑は水面よりも高く、武庫川の水を利用することは出来ませんでした。村人達は村の東にそびえる山の東側に大きな溜池を構築し、等高線に沿って延々と村の中に水を引き込んだのです。今も春先の農作業の前に、村人達が水を確保するために「うら山池」までの水路の点検補修を続けています。(古市地区まちづくり協議会のページより
柏野山
 ため池の東端の尾根を境界杭を拾いながら柏野山まで登る。頂上付近はなだらかな林なので、どこがピークか迷う。これを下るときはおろおろしそうである。昨日の道を古森山へ歩く。林道へ続く地形図の破線の道を探したが分からず、結局古森山を南下して地蔵峠の丸木橋へ戻ることにする。油断大敵、途中からまたしても見覚えのないところに出てしまい、GPSで昨日のトレースを探し出して元に戻ることができた。この辺り枝道がたくさんあり、それぞれにテープがぶら下がっているので下りは注意が必要である。 (古森山から道なりに下ってくるとうらやま池へ降りてしまう。ピークで90度右(西)へ曲がること)

境界杭を拾いながら柏野山へ

柏野山頂上

古森山(寺跡)

古森山から海見山を正面に見ながら下る

高速側道(直進)を行く
高速側道
 4度目の地蔵峠丸木橋から岩ゴロ道を林道に下る。昨日と同じ、この分岐で写真をとる。実は帰宅後昨日の写真と比べると巻きつけてあるテープの色が違ったのである(1日目の記録参照)。

側道から丹南武庫川橋と虚空蔵山(右)

高速道と白髪岳と松尾山(右)

舞鶴自動車道の側道を細田橋の駐車地まで歩く。正面に虚空蔵山を、背後に白髪岳と松尾山を眺めながら。

山笑ひ雑木林に風生る       ハナミズキ
*追記:後日くだんの女性郷土史研究家から電話があり、実は3月1日早朝、南尾根から海見山に登ったと。僅か数時間前に私と同じコースを辿っていたのである。テープの色が変わっていた謎もこれで解けた。
海は見えなかったが、地元の市場で82歳になる古老から、また畑仕事中の65歳の男性から子供の頃に登り、須磨から明石の海を見たというお話を伺ったそうである。もう一度地図を広げてみた。確かに虚空蔵山の東が開けており、定規を当ててみると明石に至ることが分かった。やはり海は見えたのだ。(2009.3.25)
関連ページ:摂丹国境の柏野山・海見山(2019.4.20)

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