UP2018.2.12/ 2011.9.4 yamaboushi

 有馬温泉 癒しの森を歩く

■日時:2011.8.31(水) 曇
■場所:神戸市北区有馬町
     2.5万地形図 宝塚・有馬
■同行:9名(内女性3)
行程:太閤橋0945→湯泉神社1015→愛宕山1030→極楽泉源1050→炭酸泉源1105→鼓ヶ滝1140→林道(昼食)→高塚の清水1300→炭屋道1330→筆屋道1410→瑞宝寺1500→太閤橋1530

地図はこちら 温泉街Map 癒しの森案内図

 いつも車で通過してしまう有馬温泉だが、今日は武庫川エコハイクスタッフとともにに有馬温泉の温泉街と後背の有馬癒しの森を歩く。有馬温泉は有馬川の上流、六甲川と滝川が交わるところにある。六甲山へ登るハイカーはあっても、癒しの森として整備された炭屋道・筆屋道を歩く人はなく、案内板だけがさびしく人待ち顔であった。
「有馬温泉」
 『有馬温泉の歴史は古く、昔から皇族・貴族・文化人らに愛され、日本最古泉とも言われる。7世紀舒明天皇や孝徳天皇がしばしば行幸された記録がある。8世紀に僧行基が温泉を開き、温泉寺などを開創され、有馬温泉の基礎を作られた。その後11世紀末の大洪水で温泉は荒廃した。鎌倉時代の12世紀になると、大和吉野の僧仁西が熊野権現の夢のお告げで有馬に来て温泉を再興した。この時吉野から連れてこられた人たちに12神将に因んで12の坊を営ませた。今でも有馬温泉には○○坊という旅館が多い。16世紀には戦火と大火により有馬温泉は壊滅状態になった。しかし太閤秀吉が有馬温泉を訪れて手厚い保護を与えた。泉源の保護、六甲川の付け替え、などを行い、洪水から泉源と町を守った。行基、仁西、秀吉は有馬温泉の三大恩人といわれる。有馬温泉には銀泉(食塩泉)、金泉(含鉄強食塩泉)、炭酸泉、ラジウム泉(ラドン泉)があり、神戸市営のもの6か所と温泉旅館所有のものがある』

ねね橋から太閤橋を望む
「太閤橋」
 温泉街から外れた瑞宝寺駐車場に車を止める。平日は終日¥600で安いが中心まで10分は歩かねばならない。広大なスペースだが利用する人が少なく、ペンペン草が生えている。切手文化博物館、有馬ビューホテル、万年橋を経てスタートの太閤橋(標高370m)で阪急バス組と合流する。
 観光を兼ねて温泉街を歩く。橋の南詰に袂石(たもといし)がある(昔、湯泉神社の祭神熊野久須美命が、葦毛の馬に乗り重籐の弓を持って命を射ようとした男に袂の小石を投げつけられた。この小石が大きくなり袂石となったという。人々はこの石にさわり、その手で身体を撫でて健康を祈った。)近くに仏座に似た巨岩「仏座巌」がある。

袂石(たもといし)

仏座巌
 太閤橋の下を流れるのは有馬川、流下して有野川と合流し、道場付近で武庫川にそそぐ。延長10kmは武庫川第2の支流である。有馬川はすぐ上流で二股に分かれ、左が六甲最高峰から瑞宝寺谷を流下してくる六甲川、右手が六甲山旧極楽茶屋付近から紅葉谷・有馬温泉街を流下してくる滝川である。六甲川にねね橋が架かり、滝川は暗渠となる。合流点から太閤橋の間は河川公園となっている。

六甲川(左)と滝川(右)が合流して有馬川となる

太閤橋
 観光総合案内所に立ち寄りウォーキングマップをもらう。湯本坂を登り、金の湯(神戸市営)を右折して愛宕山の中腹にある行基開祖の温泉寺(おんせんじ)に至る。さらに有馬温泉の守護神湯泉神社(とうせんじんじゃ)への長い階段を上る。紛らわしいのはこの二つの名称で案内標識や地図も混同しているものがある。

金の湯(金泉)

温泉寺(おんせんじ)

湯泉(とうせん)神社への階段
「愛宕山」
 荷物を神社に置いて愛宕山(461m)を往復する。愛宕山は、約2000万年前にできた鐘状火山で、山頂には天狗岩と愛宕神社の祠がある。展望は茂みの間から僅かに温泉街が覗く程度で、案内板によると天気がよければ、京都の愛宕山まで見ることができるとある。

湯泉(とうせん)神社

愛宕神社祠と天狗岩
「極楽泉源」
 本日無料開放の「太閤の湯殿館」を覗いてみる。館内には秀吉が造らせた「湯山御殿」跡から 発掘された「蒸し風呂」と「岩風呂」の遺構をそのまま取り込んで展示してあった。極楽寺、念仏寺を経て極楽泉源(金泉)に立ち寄る。井戸からの配管を交換中である。作業の方に聞くと、直径5cmほどのパイプに白いスケール(酸化鉄や炭酸カルシウム等の厚い金属酸化物)が付いて詰まってしまい、5日に1回交換が必要なのだそうです。泉源を維持するのは大変なことである。

太閤の湯殿館

太閤の岩風呂

極楽泉源(金泉)

湧出井戸

炭酸カルシュウム等で詰まったパイプ
 銀の湯(炭酸泉)を右手にねがい坂を登る。湯本坂を少しバックして妬(うわなり)泉源(金泉)を覗く。昔、この前を美人が通ると嫉妬してお湯が湧き出したことからこの名前になったそうです。
 たんさん坂を上り詰めたところの炭酸泉源(冷泉:有馬サイダー、炭酸せんべいの原料)の広場で一休み。蛇口から出る炭酸水をちょっと口に含んでみたが異様な味に吐き出す。これが日本初の国産オリジナルサイダーの素なのだそうです。

銀の湯(炭酸泉)

炭酸泉源公園

炭酸泉源
有馬温泉では神戸市の管理する5つの泉源が公開されています。泉源のデータは次の通りです。有馬温泉観光協会 泉源調査報告書S58年2月発行ほか今回ヒアリングしたもので現在もその通りであるかわかりませんのであくまでもご参考に。
泉源名 泉質 泉温 PH 湧出量 深さ 掘削年 給湯先(ホテル・旅館等)
1.御所 金泉 83.5℃ 6.34 24L/分 182m S26年 4ヶ所
2.極楽 金泉 94.3 6.37 6.9 223 S28 11ヶ所(車での配送あり)
3.炭酸 銀泉 18.6 4.66 - 13 M6 -
4.妬 金泉 93.8 6.37 28 185 S30 御所泉源タンクへ,20ヶ所
5.有明第1 金泉 90.1 6.11 - 277 S17 休止中(神戸電鉄管理)
 有明第2 金泉 90.1 6.21 - 272 S30 5ヶ所(仝上)
6.天神 金泉 98.2 5.89 28 206 S23 金の湯等5ヶ所
金泉:含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉、銀泉:単純二酸化炭素冷鉱泉
「鼓ヶ滝」
 急坂を登って射場山麓のこぶし道に出る。この付近は地獄谷と言われ、射場山断層が走り、噴出する炭酸ガスで鳥や虫が死んだという。鳥地獄、虫地獄の碑が残る。有馬稲荷、かんぽの宿、魚屋道登山口、ロープウェイ駅下から鼓ヶ滝公園に下る。鼓ヶ滝は滝川にかかる落差10mの滝で、元2段であったが水害で崩壊したため修復され現在の整った形になった。もう、ぽんぽんという音は聞こえない。神戸市水道局の取水口もある。

滝川にかかる鼓ヶ滝
「高塚の清水」
 ロープウェイ駅まで戻りトイレ休憩。林道をゆっくりのぼる。格子状の節理となった花崗岩の風化激しく、落石が絶えない。途中、高塚の清水へ立ち寄る。有馬三名水の一つで秀吉が茶の湯に使ったという。道標もなく、草ぼうぼうで分岐がわかりにくい。木陰で昼食後、手分けして草刈する。入口の階段が現れ、補助ロープも見えるようになった。道をふさいでいた草木を伐採し、人が通れるようにまでなった。滝川を渡った奥に、岩を伝って流れ出る高塚の清水があった。赤紫色の岩肌は何によるのだろうか?口に含むと甘い香りがする。有馬三名水とは、ほかに旧有馬郡にある独鈷清水、筒井清水をいう。

落石激しい林道

滝川を左岸に渡る

高塚の清水
「炭屋道」
 有馬癒しの森分岐に到着する(標高490m)。案内板と小さな東屋がある。ここから魚屋道までを炭屋道といい、昭和の初めまでは炭焼き窯が多くあったことから名づけられた。標高差130m、徒歩15分とあるが、丸太階段道はコースで最もきつい登り。途中炭焼き窯跡やシチダンカの群生地(植栽)がある。足元にはたくさんの小枝付きのコナラのどんぐりが落ちている。今年はハイイロチョッキリが多い。

癒しの森 炭屋道入口

シチダンカの群生

ハイイロチョッキリに切り落とされたコナラ
「筆屋道」
 一汗かいて魚屋道(ととやみち)へ出る(標高620m)。ベンチへ座り込みたくなるが、ここは立って休憩する。30分歩いては休憩座り込みは最も疲れるパターンである。射場山を反時計方向に回り込み、石碑から少し先の大きな茶屋跡休憩所で再び休憩。少し登ったピークが魚屋道で唯一の展望ポイント。湯槽谷(ゆぶねだに)山と灰形山が展望する。

魚屋道に合流

魚屋道の茶屋跡休憩所
 六甲山トンネル跡の案内板を過ぎたところが筆屋道の入口である。このあたり、有馬筆の材料となる竹材、穂先の獣毛が多く取れたことから名づけられた。スギ、ヒノキの植林地を谷に向かって緩やかに下っていく。こちらは六甲川の流域である。
 堰堤を越えて下ると、瑞宝寺谷西尾根への分岐がある。誤ってこちらへ行ってしまいあわてて戻る一幕も。次の分岐が展望台と渓流沿い道の分岐で、ここに案内板が立っている。二手に分かれて、私は展望台方面に山道を登る。この地図では渓流の右岸を下ってやがて展望台コースと合流するようになっているが、実際は川を渡って左岸を行き、再び右岸に出て合流する。
 展望台(標高610m)から開けた谷の向こうに有馬富士や、遠く丹波の白髪岳・松尾山を見ることができた。

筆屋道を下る

展望台

射場山(いばやま)690m
「瑞宝寺谷」
 六甲川に下り、右岸にわたり、川沿いを下っていく。途中で左岸に渡る。いずれも増水時は水濡れ覚悟だが、本日はかろうじて飛び石伝いに渡渉できた。左岸を大分歩いて、太鼓滝の下流で河原に降りる。右岸にわたって上流を振り返ると太鼓滝が見える。ここも増水したら右岸に渡れない。太鼓滝から瑞宝寺は5分もかからない距離にあった。山と高原地図(2004年発行)は太鼓滝の位置を間違って記載しているので注意が必要です。癒しの森は瑞宝寺(標高460m)で終わる。しかし瑞宝寺側から癒しの森へは案内板がなく、迷走しやすいだろう。

六甲川の渡渉を繰り返す

六甲川にかかる太鼓滝

瑞宝寺公園へ出る(右側から)
瑞宝寺から六甲川にかかる杖捨橋を渡り、有明泉源、天神泉源を経て中心街に戻ってきた。癒しの森ではだれにも出会わなかったが、ここは若い人たちや外国人観光客でにぎわっていた。

有馬温泉中心街バスセンター付近

*2017.11.23現在、2014年の台風禍で紅葉谷の一部は通行止めです。詳しくはこちら

関連ページ:有馬泉源めぐり2014.12.12

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