エジプト第2日(2006.11.28)
ルクソール


ハトシェプスト女王葬祭殿→王家の谷→カルナック神殿→ルクソール神殿
古代エジプトを大雑把に区分すると、BC3000〜BC2000年がメンフィスを中心とする古王朝時代で、ナイル下流域のギザのピラミッドやスフィンクスに代表される。BC2000BC1000年がナイル中流域のテーベ(ルクソール)を中心とする中王朝、新王朝時代で、ファラオの神殿に代表される。BC1000年〜BC30年がサイスを中心とした末期王朝時代でナイルデルタ地帯に文化の中心が移り、やがてローマに征服される。

ホテルからナイル西岸を望む

ルクソール朝の街角
イスラムの朝は早い。朝5時、祈りのときを告げるスピーカーの大音響が街中に響き渡る(アザーン)。イスラム圏を訪れた観光客の最初の驚きだ。西方の砂丘が赤く染まり、鳥が群れを成して東へ移動していく。ムクドリのようだが名前は分からない。出発前ホテル前通りへ出てみる。道路工事中のようだ。仕事に出かける人々に混じって、馬車、タクシの客引きが寄ってくる。執拗だ。

ルクソールはカイロの南670km、ナイルが大きく屈曲する位置にある。その昔テーベとよばれ、紀元前2000年頃から約1000年、中新王朝時代に繁栄を極めた古代エジプトの中心地。街のほとんどの遺跡が世界文化遺産に登録されている。ナイルをはさんで、日が沈む西岸は死を象徴するネクロポリス(死者の谷)で、王家の谷などに祭葬殿や墳墓が、東岸は生を象徴するカルナック神殿、ルクソール神殿がある。

ルクソール西岸
ルクソール観光スタートはナイル西岸ネクロポリス(死者の谷)から始まる。ナイル川を2,3キロ外れるとすぐに砂漠地帯に入る。
「ハトシェプスト女王葬祭殿」

ハトシェプスト女王葬祭殿

両腕を組むのは死者を意味する

葬祭殿のレリーフ

ハトシェプスト女王葬祭殿に着く。ここは古代エジプト唯一の女性ファラオ(君主)が造営した葬祭殿で、入口から電気自動車に乗って神殿前に行く。3段となったテラスの柱には、両手を胸に組んだ死者の像が並ぶ。壁のレリーフは紀元前1500年の世界のものだが、ほとんど損傷がない。背にする山は標高250mの断崖絶壁で今にも崩れ落ちそうだ。雨でも降ればひとたまりもないであろう。

ここは、1997年11月、テロの現場となったところで、日本人ツアー客を含む60名が犠牲になった。ご覧のように身を隠す場所もない。今は、岩山の要所要所に監視小屋があり、武装警官の姿が見える。
「王家の谷

王家の谷全貌

発掘整備中の王墓
同じくルクソール西岸にある王家の谷を訪れる。歴代のファラオがここに眠る。ツタンカーメンの墓を除き、すべて盗掘され、5、60メートルある通路や玄室に神々の壁画やレリーフが残る。ラムセス3世、ラムセス4世、ラムセス9世の墳墓に入るが、ツタンカーメンは特別料金。黄金のマスク、副葬品などはカイロの博物館に移送、展示されている。

クルナ村の民家

大理石工房で
王家の谷周辺の砂丘にはご覧のようなクルナ村の集落がある。もとは盗掘を目的として集まった人達の集落のようで、多くは貴族の墳墓の上に建っているそうです。今は、大理石を加工したり、工芸品を作っているとのこと。バスは大理石工房に立ち寄る。職人さんが壷や花瓶などの置物を実演販売している。カメラを向けたらチップを要求された。

メムノンの巨像
西岸の遺跡の入口にあるのがメムノンの巨像。アメンヘテブ3世の像で、もとは後ろに葬祭殿があった。サトウキビ畑の中に悠然と立つ。

ナイル渡船場

名物ハト料理
ルクソール東岸へは、15人乗りぐらいの小船でナイルを渡る。ナイルは世界一の長さを誇る大河だが、小学校時代に習ったときは、1位がミシシッピ、2位がアマゾン、3位がナイルだった。川幅は意外に狭い。300mぐらいか。水は澄んでいるとはいい難いが、比較的きれいで手を入れたくなる。すくってみようとしたら、衛生状態が分からないからやめておけ、とハナミズキが制す。川べりには水上レストランの船がずらり並ぶ。ミニクルージングを楽しんだ後、対岸に上陸して、街のレストランへ入る。名物のハト料理(鳩の丸焼きの中にご飯を詰めたもの)、果物は初めて見るナッツメヤシの実。珍しいがおいしいとは思わない。イスラム系のレストランではアルコール類はない。ノンアルコールの缶ビールが30LE(600円)である。用心のため、生ジュースや生野菜には一切手を出さないことにしている。

ルクソール東岸―
ルクソール東岸には生を象徴するカルナック神殿、ルクソール神殿がある。ルクソール、カルナック神殿とも中王朝から新王朝時代に建設された遺構である。かつては両神殿とも連結されていたようで、その中心となっているのがカルナック神殿にあるアメン大神殿。古代神アメンと太陽神ラーとが習合してアメン・ラー神となり国家最高の存在となった。王はすなわち神である。
カルナック神殿」

羊の頭をした40体のスフィンクスが迎えるカルナック神殿入口

ラムセス2世の巨像と第2塔門

134本の大列柱
カルナック神殿はエジプト最大級の神殿で、その広さは30ha、参道の羊の頭をしたスフィンクス40体が迎える。牝羊はアメン神の聖獣という。塔門を潜ると、陽光まぶしく高さ20mもある巨大な柱の海で、その数134本。いずれも古代エジプトの国花パピルスを模したもので、柱の表面にはレリーフが描かれている。パピルスとはかつて、ナイル河の湿地帯に繁殖していたカヤツリ草の一種。中国で紙が発明されるまでは、その茎をスライスして張り合わせ、紙として利用していた。

ハトシェプスト女王とトトメス1世(右)のオベリスク

倒壊して横たわるハトシェプスト女王のオベリスク
大列柱の奥にはオベリスクという花崗岩の一枚岩でできた高さ30mもある石柱が2本。頭頂部が4角錐で太陽神ラーのご神体といったところか。重さは300t以上もある。
ルクソール神殿

ルクソール神殿 第1塔門のラムセス2世像とオベリスク

ラムセス2世の中庭

列柱はパピルスを模したもの

神殿の基本建築形式は、塔門、参道、中庭、列柱室、至聖所を美しくレイアウトしたもの。歴代王の名前や各神殿の違いなど、浅学の私達には良く分からないが、塔門、神々の巨像、列柱、壁画やレリーフなどその壮大さと美しさには圧倒される。

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