up 2021.4.8やまぼうし
花の吉野山を歩く
奥千本〜上千本〜中千本〜下千本
◇日時:2021.4.5(月) 曇のち晴
◇行先:吉野 青根ヶ峰(858.0m)
        奥千本〜上千本〜中千本〜下千本

     2.5万地形図 吉野山
◇同行者:MNC山歩会16名(男6、女10)
ルートタイム:
近鉄吉野駅9:30…奈良交通バス…中千本バス停9:45/10:35…大峯ケーブルバス…奥千本口バス停10:48/10:53〜金峯神社11:00/11:05〜奥千本遊歩道〜西行庵11:27/11:34〜宝塔院跡11:57〜奥駈道〜女人結界12:08〜青根ヶ峰12:12/12:18〜金峯神社(12:42昼13:12)〜高城山13:30/13:37〜吉野水分神社13:51/13:57〜花矢倉14:00/14:09〜上千本〜御幸の芝公園(頌桜碑)14:36/14:50〜竹林院前14:53〜中千本〜勝手神社15:07〜金峯山寺蔵王堂15:16/15:30〜黒門15:41〜下千本〜七曲坂〜近鉄吉野駅16:00
Route Map (GPS) 案内図、歩行約11km 

花矢倉からの展望
日本一の桜の名所吉野山。最高峰「青根ケ峰」から奥千本〜上千本〜中千本〜下千本へ3万本といわれるシロヤマザクラの道を歩く。上千本から俯瞰する桜の吉野は天下一である。
Youtube
「奥千本口へ」 
 5時半起床。近鉄阿部野橋駅7:30にはMNC山歩会16名が集合する。雨や時期外れに加え昨年はコロナで過去3回も中止になった吉野山だが、昨夜来の雨もあがり天気は大丈夫そうである。ただ、開花が記録的に早かった今年は上、中、下はすでに満開を過ぎているとの情報。奥千本は5分咲きとのことでこちらは間に合いそうである。電車が満員で座れないかもしれないという杞憂はなくなり、がら空きに拍子抜けであった。コロナの影響だろう、大阪は第4波の感染に見舞われており、マスク着用、大声での会話禁止、3密回避は必須である。
 乗車1時間半、山奥に入った割には車窓からみる桜は大阪の市街地と変わらない。がら空きだった車両は京都、名古屋方面からの乗客が合流したのだろう満員となっていた。吉野駅は大きな駅である。広い駅前通りに土産物屋が並ぶ。待機していた奈良交通臨時バスには全員が乗り切れず、先行組は終点の中千本で待つことになった。次いで奥千本口まで大峯ケーブルバスに乗り継ぐのだが、マイクロバス3台でのピストン運転ということで、3台目に乗ることができたが50分も待つことになった。予定が狂った。この時間は最後まで縮まることはなかった。

近鉄吉野駅 9:30

奈良交通臨時バス 中千本バス停

大峯ケーブルバス乗車 (旅館太鼓判花夢・花夢前)
「金峰神社」
 標高700mを超える奥千本口は霧の中にあった。金峰(きんぷ)神社の山門(修行門)をくぐり、急坂の参道を上っていく。参道両脇の土手の桜は後から植樹したもののようでソメイヨシノである。金峰神社は金山彦命を祀っている。大峯山黄金伝説に因む神社で、世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』(2004年〈平成16年〉7月登録)の一つである。古色蒼然とした社が石段の上に鎮座している。義経が追手から逃れるために隠れたという「義経隠塔」が坂の下にあった。扉を閉じると中は真っ暗になり、お経を唱えながら塔内を回るという大峯修行場の一つという。

金峯神社修行門

金峯神社拝殿 (世界遺産)11:00

義経隠塔
「奥千本」
 案内板に従って奥千本の遊歩道に入る。霧に包まれた杉木立の道は幽玄な雰囲気を醸す。山の急斜面につけられた階段道を下っていくと足下にヤマザクラが見えてきた。本数は少ないが満開に近く、濃緑のスギ林を背景によく映える。小広場に下りると西行がしばらく隠棲したといわれる西行庵がある。雨漏りがひどいようで、荒れた小屋の中にわびしそうな木像が置かれている。吉野の桜をこよなく愛し、吉野の桜を一躍有名にした歌人西行の「とくとくと落つも岩間の苔清水 汲みほすほどもなき住居かな」の歌碑がある。
 スギ、ヒノキが伐採され切株だらけの裸の山を歩く。よく見ると桜の苗木が植えられている。奥千本の再生事業が進められているのである。吉野山の桜は行者が桜木に蔵王権現を掘り込んだ事から御神木とされ、1300年以上にわたり人々が苗木、若木を持ち寄って植えたことから現代に伝わる。しかし、「奥千本」の地域はスギ・ヒノキへの配置植林に加え、たび重なる自然災害も相まって、桜木の減少は甚だしく、今やわずかな本数が残るだけとなっている。

遊歩道を進む

急斜面にヤマザクラ

西行庵

奥千本の桜
「青根ヶ峰」
 西行が水を汲みに通ったという苔清水から裸の山腹にある四方正面堂跡、安禅寺蔵王堂跡を経て宝塔院跡に至る。一帯には大小多くの寺院があったが明治の廃仏毀釈令で廃墟となったという。切株の中に植えられた桜が開花している。あと5分も歩けば元の金峰神社に戻り、奥千本道を周回したことになるが、我々は吉野最高峰の青根ヶ峰を目指して奥駈道へ進む。500mほど歩くと青根ヶ峰登山口で、山上ヶ岳への道標横に女人結界の石碑が立っている。女性陣はお構いなしに禁を破る。丸太階段を登ること5分で青根ヶ峰山頂であった。スギ林の中に3等三角点西川858.0mがあった。集合写真を撮って元の道を戻る。途中、山仕事をしているご老人からナラタケ菌による桜木の枯死、奥千本の桜再生事業のお話を聞く。金峰神社に戻り、遅い昼食を摂る。

安禅寺蔵王堂跡 植樹した桜が花をつけている

宝塔院跡 この先は奥駈道

奥千本再生事業現場

青根ヶ峰 正面

登山口と女人結界碑

青根ヶ峰で 12:15
「上千本」
 青空が広がってきた。参道を下り、奥千本口バス停から上千本、中千本、下千本へと下っていく。車が往来する舗装の道は足腰にこたえる。また車をよけるため気を遣う。花見シーズンは全山車両通行禁止にすればいいと思う。高城山展望台698mに立ち寄る。満開のヤマザクラの向こうに大和盆地、金剛、葛城、二上山、生駒山から高見山まで展望する。

左から金剛山、葛城山、二上山、生駒山

高城山展望台698m
 吉野水分(みくまり)神社まで下りてきた。当神社は、水を司る神社で、元は青根ヶ峰に位置したとされる。青根ヶ峰は吉野川の源流の一つで、「水分 = 水配り」の神の鎮座地にふさわしい場所である。「みくまり」が「御子守(みこもり)」となまって、子宝の神として信仰されている。社殿は豊富(臣)秀頼が再建したもので、本殿、拝殿、弊殿、楼門、回廊からなる桃山時代の建築で、世界遺産の一つに数えられる。時間がなかったので拝観はパスする。少し下ったところが花矢倉で、吉野山随一の展望所である。標高600m。眼下に蔵王堂・上千本・中千本を一望、馬の背にある門前町吉野の景観が素晴らしい。ただ、山上に広がるソーラーパネルが気になる。つづら折れ坂からの上千本の桜も圧巻である。

吉野水分神社(世界遺産)

花矢倉の展望 馬の瀬にある門前町吉野

花矢倉茶屋で14:00

つづら折れから見る上千本の桜
「中千本」
 つづら折れの坂を下っていくと往路の中千本の竹林院だが、その手前の御幸の芝広場に入る。目的は桜博士笹部新太郎の頌桜碑を探すためである。それは三角点中千本435mのある小山の下、後醍醐天皇慰霊詩碑の前にあった。碑の後ろにはササベザクラが植えられ満開の花をつけていた。 竹林院前から勝手神社に下りてきた。ここからは歩行者天国になる。土産物屋が軒を連ねる。馬ノ背に立つ商店の多くは3階建てで、3階部分が道路に面していると聞く。道の東に入った駐車場から見上げる上千本の桜が美しい。保湿性のある片岩が桜を育てる。

笹部新太郎 頌桜碑

ササベザクラ

勝手神社前 歩行者天国 15:05

中千本から上千本を見上げる
「金峯山寺」
 商店街を歩く。コロナ禍でも人が多い。吉野といえば葛が有名だが、吉野産かどうかわからない。お土産にくずもちを買う。金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂に入る。金峯山寺は吉野山のシンボルであり、修験道の総本山。吉野の桜は金峯山寺への献木から始まったという。蔵王堂は檜皮葺きの、東大寺大仏殿に次ぐ木造大建築。世界遺産の一つである。本尊の蔵王権現像(重文)3体がまつられ、特別御開帳されているが拝観料¥1600に二の足を踏む。境内の四本桜はすでに葉桜になっていたが葉も美しい。仁王門は修復工事中で立ち入ることはできなかった。

金峯山寺蔵王堂(世界遺産) 15:20

蔵王堂拝殿

仁王門
「下千本」
 黒門を出て、吉野山に別れを告げる。ケーブル吉野山駅を見送り、葉桜となった下千本の七曲り坂を近道で下り、吉野駅に到着した。予定よりも1時間遅い電車に乗る。

黒門 15:40

吉野駅 16:00
4度目の正直、かけ足の吉野山であったが、私にとっては花と歴史の山旅であった。約3万本といわれるヤマザクラは寺社への献木からはじまり、その後の植樹、育成と西行、秀吉のお陰で日本一となった。今絶滅が危惧される吉野の桜だが、再生事業が軌道に乗り、美しい吉野によみがえることを祈りたい。(了)
関連ページ:桜の吉野山 2006.4.19
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